仕立て・和裁>「ぐし」
「ぐし」とは、和裁の運針です。
言葉自体は、「ぐし縫い」「ぐしじつけ・ぐしびつけ」「ぐしを入れる」などのように使われます。
ぐし縫いとは
ぐし縫いは、表と裏を同じ針目になる運針です。
背縫いや脇縫い、衽付けや衿付けなど、細かく縫う部位に使うことが多いです。
洋裁でいうところの「並縫い」と似ていますが、和裁の場合は布に直角に針を入れて、指ぬきで針を押し出しながら運針して縫います。
ぐしじつけ・ぐしびつけ
ぐしじつけ(ぐしびつけ)は、しつけの一種で、留袖や紋付などに用いる細かいしつけです。 縫いじつけとも呼ぶようです。
きもののしつけは、仕立てた際に布を落ち着かせるために付けますが、着る時には外すしつけ糸と、ぐしじつけのように「外してはいけないしつけ」があるんです!
上の留袖の写真にあるような衿や裾の細かいしつけは、「ぐしじつけ」です。 格調高く見せるために、あえて入れてあるものなので、取ってしまってはいけません。
ぐしじつけ(ぐしびつけ)を入れる着物
黒留袖には、ぐしびつけを必ず入れます。
その他、黒紋付や紋入りの色無地、色留袖、付け下げ・訪問着にも、ぐしびつけが用いられます。
ただし、紬の訪問着には入れません。
まれに、小紋に入れたいとおっしゃる方もいるそうですが、小紋にも入れることはできます。
羽織には、ぐし仕付けは入れません。
ぐし仕付けを入れる場所
黒留袖の場合、入れる箇所は、衿(共衿)・袖口・裾・褄下・内揚げです。
その他の着物の場合は、衿だけ入れて袖口や裾は入れないですとか、衿と内揚げだけ入れるとか、入れ方はお好みでいろいろですが、基本的に「内揚げは入れる」ことが多いです。 ※キセが外れないようにするため。
ぐし仕付けを入れるか?入れないか?
黒留袖を除き、ぐし仕付けを入れるかどうか?は、個人の判断になります。
細かくきれいにぐし仕付けが入っていると、格調高く見えるので、そのように装いたい大切な着物には入れます。 着物の地色が何色であっても、ぐしびつけの糸は白色を使います。
通常、訪問着や色無地のお仕立て時に、特に何も指示がなければ「ぐしびつけは、入れない」そうです。 指定が入った場合のみ、指定の箇所につけます。
ぐしびつけを入れると、当然料金が上がりますので、最近は入れない方が多いのだそうです。
飾りしつけとぐしじつけ
下の色無地には、大きなしつけ(飾りしつけ)と、細かいしつけ(ぐしびつけ)の両方があるのがお分かりになりますか?
大きく「一目落とし」でザクザクと縫われたしつけは、取る仕付けです。 しつけを付けたままでは着てはいけません。(時々、外し忘れることはありますが)
対して、細かく縫われているのが「ぐしびつけ」で取らないしつけです。
「ぐしじつけ」を飾りじつけと呼んで「取らないしつけ」とする場合もあるようですが、私は「ぐしびつけ≠飾りじつけ」と習いました。
飾りじつけは、着る前に外す普通のしつけとのことです。(上の写真の大きいしつけ)
ぐしを入れる
和裁教室で、無双袖の長襦袢を縫った際に「袖下の角は、ぐしを入れてください」と言われました。
袖の角にポツポツポツと小さい針目で縫ってあるところが「ぐし」です。
長襦袢は、着物の中に着てしまえば人様からは見えないものなので、しつけは取らずにつけたままで着る方も多いです。
気になる場合は、外してしまっても大丈夫です。 しつけをかける際、部分的に布が厚い(枚数が多い)ところにぐしを入れますが、これは「ぐしじつけ」とは別物ですので、しつけを外す際に一緒に取ってしまっても問題ありません。
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