裄(ゆき)は、背中心から袖口までの長さのことです。 裄丈(ゆきたけ)と呼ぶこともあります。
肩幅+袖幅=裄になります。
着物の裄の測り方
男性や子どもの着物は繰越しを取りませんので、着物を平らに置いて、背縫い(背中心)から袖口までを、そのまま測ればよいのですが。
女性の場合は繰越しがあるため、背縫いと衿付けの位置が肩山よりも少し後ろに下がります。
なので、着物の裄を測る時は、背縫いの一番上の衿付け位置から、斜めに袖口までの長さを測ってください。
※基本的に、長着もコート類も裄の測り方は同じです。(女性ものの場合)
肩山は手前にくるようにして、前身頃と後ろ身頃の身八つ口や脇線をきっちり揃えて、平に置く。 前身頃と後身頃は、ずれないようにきっちり重ねて測ってください。
背縫いから袖口の袖山までを斜めに測ります。 巻き尺で測る時も、物差しで測る時も同じです。
衿は立てるようにして、衿付け周りのしわやたるみは取ってから測ってください。
私はこれまで、背縫いから袖付けまでで「肩幅」を測って、次に袖付けから袖口の袖山までの袖幅を測って。 袖幅と肩幅を足して「裄の長さ」になるように測っておりましたけど。
ある時、骨董市の平台で素敵な着物を見つけて、店主さんの前でその測り方をした時です。
そんな風に測るの?
背縫いから袖口までを斜めに測るんじゃないの?
ウチの和裁士さん達、みんな斜めに測ってるけど???
こう↓じゃないの?
ええええーーーー? ワタシの裄の測り方、間違っています?
だって、裄=肩幅+袖幅でしょう???
この時初めて、ワタシのこれまでの測り方は、正しい測り方ではないことを知りました。
後日、和裁所の1級和裁士さんに測り方をお尋ねした際、撮影させていただいたものが、上の雨コートの写真です。 やっぱり背縫い~袖口を斜めに測るとのことでした。
身体の裄の測り方
では、身体から裄の長さを測る時には、どのように測ればいいでしょう?
一般的には、背骨の上の出っ張った骨から、肩先を通って、手首の骨(小指側に出た骨)までを測ります。
とある和裁の本には、「手を床と水平になるように上げて(90度)、背骨の一番上から手首の骨までを測り、プラス3cm加える」とありました。 45度で測っても、だいたい同じになるかと思います。
裄の長さは、フォーマルとカジュアルで少し違う
浴衣のようなカジュアルな着物と、訪問着や振袖のようなフォーマルな着物とでは、少し「裄の長さ」が変わります。
一般的には、次の通りです。
- フォーマル系:手首のぐりぐり(出っ張った骨)が隠れるくらい。
- カジュアル系:手首のグリグリがまるッと出るくらい。(浴衣とか)
- カジュアル系2:手首のぐりぐりの骨に、少しかかるくらい。(紬や街着の小紋など)
その人の体つきにもよりますが、フォーマルよりは2㎝程度短い感じ。
※手を45度角度で、下した状態での長さが目安です。
※フォーマル系は、肘を少し曲げて前でバッグを持った時に、手首がしっかり隠れるイメージです。
※浴衣は、小紋や紬の着物よりも少し短くて良いです。あまり長いと暑苦しいので、短めで可。
着る着物に合わせて、ご自身の2通りの裄サイズ(カジュアルとフォーマル)を覚えておくと便利かと思います。
着付けの仕方で裄の長さを調節する
フォーマルとカジュアルで、裄の長さが違うと書きましたが、同じサイズの着物でも、着付けの仕方で裄を長く着ることができます。
半衿を多く出し、伊達衿を入れて、衣紋を多めに抜く。 そんな風に、衿周りを開けた状態で着物(長着)を着れば、衿をつめて着た時よりも裄が長くなります。
半衿をたくさん見せて着る・伊達衿を2種入れるなど、あらかじめ分かっている場合には、着物の裄の寸法をプラスしなくてもよいかと思います。
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