卒業式で袴に合わせることができる着物。袴に合う着物について。
卒業式に袴を着ける際、合わせる着物はどんな着物が良いのか?というお話です。
「卒袴」には、どういった着物が合うのか?
成人式の振袖をレンタルした・お誂え(購入)した等場合には、卒業式用の着物や袴向けの特典があることが多いですね。
「お安く借りることができる、購入した振袖に合う袴を貸していただける」等のサービスがあるかと思います。
こちらでは、お家にある着物を合わせる場合等、袴に着用できる着物にはどういったものがあるのか?について書いてみたいと思います。
卒業袴に合う着物の種類
卒業袴に合わせる着物は以下のようなものになります。
圧倒的に人気なのは、冒頭の写真のような二尺袖(小振袖)の着物です。 次いで、成人式に使用された振袖の着物を着られる方が多いようです。
中振袖
成人式に着る振袖には、大振袖・中振袖がありますが、中振袖が一般的です。 成人式で着た振袖を、卒業袴に合わせて着ることができます。
小振り袖(二尺袖)
二尺袖の着物も小振り袖の内に入ります。 レンタルの袴にセットされる着物は、二尺袖の着物が断然多いです。
色無地(紋なし、紋あり)
背中に一つ紋付きが良いとされますが、場合によっては紋はなくても良いでしょう。 地味なタイプは、先生のようになるので要注意です。
江戸小紋
とても細かい模様の型染小紋の着物です。 格の高い柄に一つ紋付のものは、色無地感覚で使えます。 先生のようにならないコーディネートで。
附下(つけさげ)
柄が上を向くように反物に柄付けしてある着物で、紋入りもあります。 色柄にもよりますが、近年はあまり袴には使わないかも。
訪問着(ほうもんぎ)
附下の着物で、仮縫いして絵羽柄を入れたもの。共八掛がついた着物。 色柄にもよりますが、近年はあまり袴には使わないかも。
小紋
柄の上下を気にしない総柄の着物。 卒業袴に合うかどうかは、色柄にもよります。 二尺袖よりもお袖が短く、カジュアルな部類の着物です。
昔は、振袖や一つ紋の色無地を卒業袴に合わせて着る方が多かったように思いますけど、今はキュートな色柄の二尺袖が流行りです。 卒業袴は、卒業式でしか着れません。 ぜひ、気に入った着物をお召しになってくださいませ。
袴に合わせる着物の袖丈
着物の袖の長さ(袖丈)は、着物を仕立てられた方の身長にもよりますけれど、大人の女性の普段着物の袖丈は、1尺3寸程度(50センチ前後)のものが多いです。
礼装用の着物や若い方の着物は、お袖を少し長めに作りますけど、最近では付下げや訪問着の着物であっても、小紋や紬の着物と同じくらいの長さにすることが多いようです。
◆袖丈のイメージ48センチの無地着物と53センチの小紋の着物
レンタルの袴にセットされる着物は、二尺袖が多いです。 袖丈は76センチ程度になりますが、もう少し長めのものも二尺袖と呼ぶようです。
さらに長めのお袖で、85センチ~95センチの袖丈の着物を「小振袖」と呼び分けることもあるようですが、二尺袖を小振袖とも呼びますので、このあたりはちょっと曖昧な気がしています。 小振り袖の一種として『二尺袖の着物」があるのだと思います。
小振り袖を簡単に言えば、「お袖の長さが成人式で着る振袖よりは短くて、小紋や色無地よりは長い袖の着物』という感じですね。
ちなみに成人式で着る振袖は、中振袖(100センチ前後の袖丈)です。 最近のお嬢さんは身長が高いので、大振袖(本振袖)という 120センチくらいのお袖にする方もいらっしゃるそうですが、花嫁さんが着るような豪華な大振袖は、卒業袴には合いません。
「袴に合わせる着物」ということで言えば、袖の長さに特に決まりはありません。 ただし、年配者が長い袖の着物を着ることは通常ありませんので、 先生が着る卒業袴のお着物は、1つ紋付の色無地あたりがよろしいかと思います。
また、小学校の卒業式は、短大や大学の式典ほど華やかではないと思いますから、豪華な振袖は避けた方が無難かもしれないですね。 軽めの柄ゆきであれば中振り袖でも良いとは思いますが、校風や他の生徒さんと合わせることが大事です。
「卒業袴」に、お家にある着物を使う場合
着物は、振袖・二尺袖・小紋・無地・付下げ・訪問着と、どの着物でもサイズ的に着れるのならば大丈夫……と書きました。 そのうえで、疑問に思われるかもしれないことを書いておきますね。
色無地、江戸小紋等の紋の有無
色無地・江戸小紋・付下げのような着物には、一つ紋付きが良いとされています。 紋を入れることで「略礼装」になる着物だからです。
◆白抜きの1つ紋と、縫い紋の例
(紋の入れ方で着物の格が変わってきますが、卒袴はどちらでも)
いくら紋があった方が良いと言っても、五つ紋に比翼がついた留袖や色留袖の着物は、卒業袴には合いません。
色無地などに「抱き紋(胸にある左右の紋)」はあっても良いので、刺繍のしゃれ紋でしたら、若い方がお洒落に着ていただけると思います。
無紋の色無地着物は、小紋の着物と同格ですから、格式張った感じの卒業式には避けた方が良いと思いますけど。 カジュアルなお式であれば、ワタシは良いと思います。
ただし、先生としての立場であれば、紋付の方が相応しい気がします。 土地柄などもあるでしょうから、地域の呉服屋さんや美容院さん、 貸衣装やさんにお尋ねになってみてください。
附下や訪問着の裾模様は、袴を着ると見えません。
裾模様の入った附下や訪問着は、袴を穿くと隠れて見えなくなってしまいます。 勿体ないと思いますが、それが普通なので問題ないです。
◆裾模様が袴で隠れると地味になることを想定して、着物を選んでください。
付下げや訪問着の着物の地味・派手は、ケースバイケースですね。 悪目立ちしないよう、似合わない着物を無理して着ないようにしていただければと思います。
卒業式。 着物の素材と袴の素材
着物の素材は、正絹でも化繊でも構いません。
もちろん正絹の着物の方が肌触りがよく着心地が良いですが、レンタルの二尺袖の着物はポリエステルの化繊着物がほとんどです。 お家にある化繊の着物が合うのであれば、無理に正絹の着物を探す必要はないと思います。 ただし、ポリエステルの着物は多少すべるので、絹より着崩れしやすいことはご承知おきください。
袴の素材も、ウールやポリエステルがほとんどです。 色や柄・袴の丈(サイズ)が合えば、袴はウールでもポリエステルでも良いと思います。
◆ウールの袴とポリエステルの袴
卒業袴で避けた方が良い着物
卒業袴に合わせる着物で、やめておいた方が良い着物は、ウールや紬・木綿のような織の着物です。
◆ウールの着物と紬の着物・羽織の例
以前は学生さんの日常着であった袴なので、卒業式といった式典でなければ普段着の着物で袴を着けても構いませんが、 卒業式に「超普段着」は礼を欠きます。
ウールや紬は、どこのご家庭にでも「箪笥に眠っている可能性が高い着物」だと思いますが、 参列者の皆さんがセーターにジーパンといったラフな格好でなければ避けてください。
また、そうした普段着の場で「袴+織の着物」を着る場合には、刺繍にぼかし染めのような卒業式用の袴は合わないと思います。 着物の質感がほっこりしている場合には、袴もバランスを見て選んでください。
◆ウールのアンサンブルにウールの袴の例
卒業袴に合わせる着物のデザイン
大学や短大、専門学校等の卒業式で袴を着る場合、どんな場所で開催されるのか? 卒業される学校の校風は?といったことを考えてみてください。
お家にある着物を利用される場合でも、格式高い会場でしたら、振袖や訪問着・1つ紋付き色無地や友禅着尺などが良いと思いますが、 まわりの皆さんが流行のカジュアルな袴と二尺袖のセットだったりすると、着物によっては地味すぎちゃったり上品すぎちゃったりすることがあるかもしれません。
学校の生協で卒業袴のレンタルの用意がある場合には、利用される生徒さんも多いと思いますので、 どんな感じの着物や袴が多くなりそうか?を、参考までに調べておくのも良いですね。
右へならえで皆と同じような着物にした方が良いということではありませんが、アンティークのような個性的な柄のお着物を選ばれる場合には、 場の雰囲気と合うかどうか?を検討していただくと良いと思います。
アート系や服飾系の学校のご卒業式では、斬新だったり、モダンで洒落た柄ゆきだったりといった着物や袴を着られる方が多いようですので、 一概に「どういうデザイン(種類)の着物が良い」とは言えないです。 校風というのも大事であると思います。
◆2016.10.28 日本橋着物100体イベントで撮影 卒業袴の着物例
着物のサイズが合っているかどうか?のチェックポイント
小学生の卒業袴のページでも書きましたけど、着物の裾は袴で見えなくなりますので、着丈は気にしなくても大丈夫です。 裄が短くないか? 着物の幅はどうか?(前巾の打ち合わせ)を確認してください。
着物の裄はフォーマルなのか?カジュアルなのか?によって、多少違ったりもするのですけど。
大体は、手を斜め下45度に下ろした時に、手首のぐりぐりがちょうど隠れるくらいが理想です。 少しくらいの長い・短いは気にしなくても良いかと思いますが、 手の甲が半分近く隠れてしまうとか、七分袖みたいに見えるのはNGです。
レンタルの場合はお店の方に見ていただけますが、ご自宅の着物を利用なさる場合には、 ヘアメイクや着付けをお願いする方に、事前チェックをしてもらってくださいね。
◆卒業袴の着物 着物の裄丈
着物の打ち合わせは、胸元がキレイに着付けられるようでしたら大丈夫と思います。 幅が狭すぎると衿元がはだけますし、逆に大きすぎると肩の内側あたりがモサモサと余ります。
小学生のお子さんの場合は、裄丈を肩上げで調節できますが、大人の女性の着物は裄丈が合わない時には、 裄だし・裄つめで袖付けを縫い直していただかないといけません。
その際、筋けしといって縫い跡を消していただく必要もあるので、寸法直しにはわりと時間がかかります。 着物のサイズが合わない着物のサイズの直しをお考えの場合には、余裕を持って出すようにしてください。