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着物のアイロンのかけ。着物のシワ取り・スチームアイロンのかけ方等
プロ直伝の着物のアイロンかけをご紹介します! 家庭用アイロンを使う場合と、スチーマーを使う場合。
着物のアイロンのかけ方を、着物手入れのプロに教えていただきました。 正絹の袷(お召し)と、綿手ぬぐい(浴衣のイメージ)でシワ取りをしていただきました。
※2019.05.13 「そめの近江」経堂店さんにて、実演を撮影をさせていただきました。
教えてくださったのは、そめの近江ケア工場の技術課長さまです。 とても丁寧にわかりやすく教えていただき大感謝です。 足袋のアイロンも教えていただいたので、別途動画をご覧ください。
足袋のアイロンかけ方
足袋のアイロンかけの方法です。その他、洗い方・クリーニングに出す場合なども。
家庭用アイロンを使う場合(動画)
まずは動画でご覧ください。
■【家庭用アイロンでのかけ方】
綿の場合と、正絹・袷のお召しを裏からかけた場合。 アイロンのかけ方とポイント。
家庭用スチーマーを使う場合(動画)
家庭用のスチーマーを使って、着物のシワを取る場合の実演動画です。
■【家庭用スチーマーを使ってシワ取り。】
平置き・ハンドミトン・吊って行う場合のかけ方とポイント。
スチーマーで取れない強いシワは、手ぬぐい(乾いたもの+湿らせたもの)にアイロンも併用しています。 アイロン編(上記)もご覧くださいね。
着物にアイロンをかける前に(脱いだらすること)
着物のシワ取りは、着る直前に行うよりも、着物を脱いだ後の「仕舞う前」に行う方が良いそうです。 着物や帯を着用したら、ひと手間かけて、収納の前にアイロンかけをしてください。
まずは陰干し
◆風通しの良い・陽のあたらない場所で「陰干し」をする。
◆できれば、西日の入らない10時~15時がベストタイム。
着物を吊るすことで、湿気を取りのぞきます(体温を飛ばす)。
大体のシワは、着物の重みで取れるそうです。
アイロンをかける順番(部位)
◆基本的には裏をかけてから、表をかけるようにしてください。
表から見た場合の部位(アイロンをかける順番)
- 5:身頃の下側
- 6:袖
アイロンやスチーマーをかける際のポイント
重石を使う
アイロンをかける際は、重しを使うと良いそうです。 シワが開く方向に手で布をピンとはって、アイロンの重みだけでかけます。(押し付けない)
◆重石をおいて、アイロン(スチーマー)をかけるイメージ。
- ・上の写真の場合は、矢印の方へテンションをかけます。
- ・段差のある部分などアタリが心配な部位は、当て布をしてください。
- ・アイロンの先は、アタリが出やすいので注意してください。
- ・着物の縫い目・キセが開かない向きで行ってください。
- ・重石とアイロン(スチーマー)が、着物の縫い目やキセをまたがないようにしてください。
重石が無い場合には、脚(足)を使ってください。 写真は膝下で押えていますが「足の裏」を使っても良いとのことです。
袖のアイロン(スチーマー)
袖にアイロンをかける場合は、袖底に重石を置いて、袖山に物差しを入れます。 袖全体に均等にテンションをかけて熱を当ててください。
※物差しは、メモリにスチームが当たらないように、目盛りの無い面を使います。 熱で染料が落ちて移る心配があるからだそうです。
衿肩あきのアイロン(スチーマー)
衿肩あきにアイロンをかける場合は、アイロンをミトンを使うと良いです。 洋裁用の「仕上げ馬」等でも使えます。
※袖山などの他の部位はキレイな場合は、衿付け(衿肩あき)付近のシワ部分にだけアイロンをかけてください。小型なので、スチーマーの方がかけやすそうです。
綿と絹では、アイロンのかけ方が違う。
動画を見比べていただくとお分かりになるかと思いますが、綿と絹では、アイロンのかけ方が異なります。
◆綿にアイロンをかける場合
※布目によって、伸びる方向と伸びない方向があるので、伸びない方向へアイロンを滑らせるようにしてかけるイメージ。 一般的には、反物幅(横方向)は伸びやすいですが、長さ(縦方向)は伸びにくいです。
※表からアイロンをかけてOKですが、アタリが出る心配のある部位(厚みのあるところ)は当て布使用で。
◆絹にアイロンをかける場合
重石で押えて、左手で「縫い目が整うように」テンションをかけた状態にして、スチーマー(アイロン)をかけます。 絹は摩擦に弱いので、押し付けて伸ばすことはしません。 ケバ立の原因になるので、押さえつけてかけることはしないでください。
部分的に伸ばすのではなく、アイロン台に置いた布地全体を「キレイに整えるイメージ」で行ってください。
※引っ張りすぎると、縫い目が曲がったり波打ったり、目が開いたりするそうです。
生地によっては、熱で色が変わって見えることがありますが。 特に金銀箔などの加工物ではない(普通の生地)物であれば、熱が冷めると元の色に戻ります。
着物を吊ったまま、スチーマーをかける場合。
- ・衿は「親指」で引きながらスチーマーをかける。布が戻るので、冷めてから指を離す。
- ・ミトンで挟むようにしてスチーマーをかけても可。その場合、同じトコロに留めないこと(縮むから)
- ※すべての面を均一に引っ張らないといけないので、難易度高め。 引っ張らずにスチームをかけると、縮むので注意。
キツイ(強い)しわを取る場合。
スチーマーが無い場合や、アイロンでもシワが残ってしまった場合は、湿らせた手ぬぐいを使って「蒸らして」取ります。
- ・手ぬぐいは、できれば白無地(晒など)。色柄ものは、色が出なくなるまでよく洗って使ってください。
- ・霧吹きで湿らせても、濡らして固く絞っても可。 ただし、一部分のみびしょびしょにならないように。
- ※濡れ手拭いを着物に直に乗せてしまうと、輪ジミができる恐れがあるのでやめましょう。
- ※手ぬぐいで着物が見えなくなるので、キセや縫い目に気を付けてください。
着物のシワとり・お手入れまとめ
高価な正絹の着物に、スチームをかけたり、アイロンをあてたりするのは勇気がいりますが、正しい当て方をすれば大丈夫なんですね。 とは言え、 慣れないうちは、失敗することもあるかと思います。 最初のうちはなるべく安価な着物から始めてください。
以下に、基本的なことと失敗した場合も書いておきますので、ご参考まで。
木綿・麻 | 高温:180~200度 |
---|---|
絹・ウール | 中温:160度~180度 |
化繊・ポリエステル | 低温:120度 |
黄変した胴裏に水は危険!
プッシュ式アイロンのスチームは、中の水が垂れてきたり、プシューッと蒸気が勢いよく出た際にダマになったりするため、あまりオススメしないそうです。
ちなみに、下の画像は「黄変した胴裏に水を垂らしたところ」です。
箪笥の奥に仕舞いっぱなしにしていた着物など、胴裏が「黄変」してまだらになっていることがありますが。 こうした状態の胴裏に水を垂らすと、乾いても水跡は消えないそうです。 即座にシミになるというから、怖いですね~
そもそも、胴裏の黄変をそのまま放置してしまうと、表地にも影響してきてしまうので、早急に胴裏の張替えをしないといけないという話になっちゃいますが(笑)
パールトーンなどの加工がしてある表地は別として、大粒の水滴がでる霧吹きなども要注意です。 輪ジミを消すのは難しいので、付けないように御注意ください。
もしも、アイロンで生地がノビてしまったら?
アイロンやスチーマーをかける際に、もしも引っ張り過ぎてしまって、着物がのびてしまったらどうしましょう?
何もテンションをかけない状態でスチームをあてると、生地が縮むそうなので。 布目が整うように固定しておいて(引っ張らないで)、蒸気を当ててつめてください。
逆に、熱を加えている間は布地が動きます。 シワを伸ばす場合には、張った状態(テンション)のまま、動かさずに布が冷めるのを待ってください。
アタリとは?
アイロンでテカリが出たような状態を「アタリ」と言います。
例えば、下の写真は「正絹の紗(夏物)」の着物の裏にスチームをかけていますが。
表からアイロン(スチーマー)を当てる場合に、この段差(生地が重なっているところ)は気を付けないと「テカリ」が出てしまうんですよね。
よく、学生服のズボンのお尻やスカートがテカテカになっていたりしますが、あんな感じです。
アイロンの先でこすらない(出やすくなる)、当て布を使うなどで回避するしかないのですが、アタリがついてしまうとプロでも元のようにはならないそうなので、要注意です。
アイロンやスチーマーを使う場合には、まず、目立たない部分(下前や帯に隠れる場所など)で試してみて、自分では無理そうだと思った場合は、潔くプロの手にゆだねましょう。
また、金糸・銀糸・金箔などの入ったフォーマル着物は、熱で変色したり変質したりしますので。 最初からプロにお願いするのが無難です。