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伊達衿・重ね衿(だてえり・かさねえり)について。着物の着付けに使う和装小物。
着物の着付「準備リスト」によく書かれている「伊達衿・重ね衿(だてえり・かさねえり)」ってどんなもの?どう使うの?というお話です。
伊達衿・重ね衿(だてえり・かさねえり)とは?
伊達衿(だてえり)と重ね衿(かさねえり)と呼び方が違っていても、実はどちらも同じものです。 着物の衿と半衿の間に入れて、着物を襲ねて(重ねて)着ているように見せるための「下着衿」です。
大正時代まで、留袖・振袖・訪問着といった礼装用の上質な着物は、すべて2枚(もしくは3枚)を重ねて着たのでした。 現代では、留袖に「比翼(ひよく)」を付けて仕立てますが、これは 2枚重ねの名残です。 伊達衿・重ね衿は、比翼衿をさらに簡略化された「下着衿」と言えます。
■留袖の比翼:白羽二重(しろはぶたえ)の比翼衿(ひよくえり)を付けて仕立てます。
■振袖の重ね衿:正絹やポリエステルの伊達衿を、着付の時に重ねます。
広巾タイプの伊達衿(重ね衿)
昔はこのような「広巾タイプの重ね衿」がポピュラーでした。
■広巾タイプの重な衿の例
※箱入りの伊達衿⇒丹後ちりめん緞子(どんす)織り
衿の天に糸がついているものも多く、この糸を引いて半分に折り、衿幅にして使います。
広衿の着物と同じで、天では真半分に折って衿幅としますが、衿肩あきから衿先にかけては、使いやすい幅に広げて使うのが一般的です。
違う色の重ね衿を2枚使って、より華やかにコーディネートするのも素敵ですが、2つ折りの重ね衿を2枚合わせると厚くなります。 2枚と言わず3枚以上を重ねても良いのですけど、枚数が多くなるほど 胸元にボリュームが出ます。 地厚の着物の場合には、1枚で2色を出すことができる「リバーシブルタイプの重ね衿」をお勧めします。
リバーシブルの伊達衿(重ね衿)
1枚で4通り使える「リバーシブルタイプ」の重ね衿です。
衿巾が初めから半分に折られているので、そのまま着物の衿にセットできて使いやすいです。 広幅タイプと組み合わせて使うこともできます。
■金銀リバーシブルの重ね衿が1枚あると重宝します。
濃い色を半衿側に持ってくるか?着物の衿側にするか? 色の出し方で印象が変わります。 半衿が白地ならば、濃い色を半衿側に・着物衿側に淡い色とすると締まって見えます。
伊達衿(重ね衿)を用いる着物
伊達衿(重ね衿)は「礼装着物の重ね着の名残」なので、普段着としてのカジュアルな着物(木綿・ウールなど) や、紬といった織りの着物には使いません。
主にフォーマル・セミフォーマルの染めの着物に用いて、格を上げたり・華やかさを演出したりと、衿重で重みを付けるために使うことが多いです。
小紋の着物は、伊達衿を単なるおしゃれとして使うこともあります。 お手持ちのハギレで作って用いても素敵です。
■伊達衿・重ね衿と着物
- ・留袖:比翼を付けるので使いません。
- ・色留袖:1つ紋付など比翼を付けない場合に、白や淡色のものを用います。
- ・訪問着:格式や儀礼的な場には白もしくは淡い色を。パーティーなどは濃い色も。
- ・付下げ:訪問着に同じ。 食事会やおでかけ着としてなど、無くても可。
- ・色無地:付下げに同じ。3つ紋以上は、訪問着に同じ。
- ・振袖:着物・帯・半衿などとコーディネートして華やかに。 2枚以上重ねてもOK。
- ・小紋:きものの色柄やTPOにより使い分けてください。 絞り・更紗・江戸小紋などの伊達衿は、アクセサリー感覚で用います。
- ・紬やウール:通常は使いません。
- ・ゆかた(浴衣):通常は使いません。 ミュールを履いて洋服感覚で着るような場合に、レースを挟んだりすることはありますが、本来の伊達衿の意味はもちません。
- ・卒業式の袴:振袖・二尺袖・小紋・無地など、着物に合わせて使います。(無くても可)
- ・七五三晴れ着:子ども用伊達衿を使ってください。(5歳は無くて可)
- ・十三参りの着物:大人用の伊達衿でも使えます。(無くても可)
■卒業式二尺袖+袴の伊達衿の例
■子ども用と大人用の伊達衿(重ね衿)のサイズ感の違いの例
色留袖の重ね衿
5つ紋や3つ紋の色留袖の場合には、黒留袖と同じように比翼衿を付けるか、白羽二重の伊達衿が良いと思いますが、一つ紋の色留袖ならば、 上品な淡い色も似合います。
一つ紋の色留袖も、TPOによってコーディネートは変わりますので、ワタシ的には以下のような感じがおすすめです。
- ・結婚式のようなフォーマルな席は白。
- ・格のあるお茶席や式典は、白か淡い色。
- ・華やかなパーティーなら、金銀や個性的な色でも
■色留袖(1つ紋)に合いそうな伊達衿の例。
振袖の重ね衿
成人式やお正月の初詣で着る中振袖に合わせる伊達衿は、着物や帯等とのコーディネート次第で、お好きなものを 選んでいただいて良いと思います。
レース付き、パール付き、ビジュー付き、刺繍付きなど。 素敵な重ね衿がたくさんあるので、お好みでチョイスしてください。
■パールの重ね衿の例。
お友達の結婚披露宴などの「主役が別にいるシーン」では、あまり華美になりすぎない「礼を重んじたコーディネート」を心がけましょう。
振袖の場合には、濃い色や華やかな色の伊達衿であっても、着物や帯と調和が取れているのであれば、問題無いと思います。 むしろ、 無理に淡い色や白を合わせる必要はありません。
訪問着・付下・色無地の着物の重ね衿
訪問着・付下・色無地の着物の重ね衿も、TPOによって変わってきます。
お子さんのお宮参り、卒入学の付き添いでお召しになるなら、上品な薄いお色の重ね衿がオススメです。 白い紋綸子や紋縮緬でも良いと思います。 もしくは、 重ね衿は入れずに着付けをされても構いません。
少し格式高く装いたい場合には、2枚重ねて見えるリバーシブルタイプを入れても良いですね。 重ね衿は重ねるほどに、衿に重みがでますから。
■訪問着(チャペル&披露宴)重ね衿の例。
※品格があれば、濃い色・金銀・淡い色とどれも良いと思います。
色無地の着物は、紋の数によってTPOが変わりますので、1つ紋なら付下や軽めの訪問着と同じ感じで、無紋ならば小紋の着物と同じ感じが良いのでは?と思います。 三役柄の江戸小紋の場合も同様です。
また、おなじ一つ紋であっても、縫い紋よりも染め抜き日向紋の方が格上なので、そのあたりも意識してくださいね。
無難な重ね衿は、無地の縮緬地あたりと思います。
訪問着・付下・色無地ともに、格式ばらないよそいき着としてお召しになるなら、あまり仰々しくならないように。 おしゃれ着としてのコーディネートでしたら、 少しデザイン性のある伊達衿も素敵と思います。
小紋着物の重ね衿
「小紋=カジュアル着物」というイメージもありますが、帯や小物合わせによっては、改まった場所や華やかなシーンで活躍してくれる着物でもあります。
改まった・儀礼的シーンでの着用ならば、伊達衿も品格のあるコーディネートがおすすめです。
街着としてお洒落で着る小紋であれば、絞りや柄物の伊達衿で、粋に着ていただいても大丈夫です。
■絞り(はぎれ)・柄の重ね衿の例。
七五三の重ね衿
3歳・7歳の晴れ着セットの場合には、伊達衿があらかじめ長着(きもの)に縫い付けられていることが多いです。
■3歳・7歳晴れの例。
反物やお宮参りの着物から誂えたような場合には、市販の伊達衿がありますので、こちらをどうぞ。
5歳の羽織袴の場合は、伊達衿は入れないことの方が多いです。 入れていけないものではありませんので、お好みでどうぞ。 最近は、デザイン性の高い5歳用セットも多いので、 コーディネートを華やかにするために、初めからセットされているセットもあります。
七五三の伊達衿は大人のものでは大きすぎるので、不要なものがあるのでしたら、サイズを小さく作り直していただいても良いですね。 縮緬や紋綸子のハギレでお作りいただいても大丈夫です。
手作りをする場合には、あまり厚く・硬くない生地を選んでください。
三歳着物。外した伊達衿・半衿を付ける。
七五三3歳被布セット(ポリエステル製)洗い方でご紹介しています。伊達衿付け方。 7歳や5歳も基本的には同じです。
十三参りや小学校の卒業袴に
十三参りや小学校の卒業袴に着る着物の伊達衿は、可愛らしい明るいお色が個人的にはおすすめです。
小学6年生くらいになれば、大人用の重ね衿が使えますから、振袖用のキレイな濃色やリバーシブルのタイプも良いですね。
十三参りもジュニア用の卒業袴も、重ね衿は入れなくても大丈夫です。 お好みでコーディネートをしてみてください。
■ジュニア袴の例。七五三晴れ着のように、付いているタイプもあります。