お雛様とは?初節句の雛人形・つるし雛について
女の子は3月3日のお雛祭り(桃の節句)に雛人形を飾ってお祝いします。
雛人形の意味や種類、飾り方・仕舞い方や、つるし雛についてです。
雛人形とは?
3月3日の桃の節句に合わせて飾る雛人形は、女の子の健やかな成長と幸せを祈り、厄や災いを払うお守りです。
ひな祭りは「桃の節句」と言いますが、3月3日に水辺で身体を清めたという中国の「上巳(じょうし)の節句」に由来しています。 ひな祭りに蛤のお吸い物やさざえのつぼ焼きといった貝類を食べるのは、日本で「磯遊びをして穢れを払う」という風習が受け継がれたからだと言われています。
◆蛤は、もとの1対でないと絶対に合わない二枚貝であることから、貞操を守る女性の象徴ともされていて、生涯一人の殿方と添い遂げられるように願うといった意味もあります。
昔は幼いうちに命を落とす子どもが多かったので、紙で作った人形(ひとかた)に厄を移して、川に流したり・お焚き上げしたりして、我が子の無病息災を祈りました。 この人形を使った厄払いと、平安時代に宮中で生まれた「ひいな遊び」が合わさって、現代のような「雛人形」へと変化していったわけです。
「ひいな遊び」とは、貴族の女の子間で流行った人形遊びで、もとは紙で作った御殿で・紙の人形を遊ばせるというものであったそうです。 「ペーパー版リカちゃん遊び」のような感じでしょうか? このひいな遊びのお人形が『男女一対』であったことと、ドールハウスが宮中の暮らしを模したものであったことが、内裏雛誕生の所以です。
雛人形が今のような形になったのは、江戸時代後半からであるそうです。 最初は「お殿様とお姫様」の親王飾りであった雛人形ですが、三人官女・五人囃子・随身・仕丁といった 人形たちや調度品も加わって、昭和には豪華な7段飾りの「十五人フルセット」が流行しました。
最近では、飾りやすく・収納もしやすいコンパクトなタイプが人気だそうです。 ガラスケースも、割れない&軽いアクリルタイプに変わってきているのだとか。
大きさ・人数・拵え・ご予算などをよく検討して、大切に。長く飾れるものを選びましょう。
参考とさせていただいた記事
雛人形を買う
雛人形は、厄払いとして女の子のお守りの役目もあるものなので、一人に一つ持たせてあげるのが良いとされています。
◆2020年友人のお嬢さんの初節句
姉妹の人数が多いなど複数飾ることができない場合には、お雛様の脇に飾る「市松人形」や「つるし雛」を買うという手もありますが、最近は「サイズもお値段も可愛らしいお雛様」がたくさんあるので、 お子さん毎に用意してあげられるといいですね。
昔は「母方の祖父母が買って贈る」という慣習がありましたが、最近では「パパとママが選んで購入し、双方の実家からお祝い金を頂戴する」というスタイルが 多いそうです。
もしもお雛様をプレゼントしていただくのでしたら、希望をきちんとお伝えして、せっかく買ってもらったのに飾れなかったなどということが無いようにしてください。 1人の子どもに2つのお雛様が届いてしまっても困りますので、『誰が買うのか?』は、初節句を迎える前に相談しておく必要があります。
雛人形はどこで買う?
「雛人形は顔が命」なんてTVCMがありましたが、やはり実物を見てみないと、サイズ感や質感がよくわからないということで、老舗人形店やデパート、トイザらス・ベビーザらス のような赤ちゃん専門店の雛人形コーナーに訪店してみる方は多いようです。
欲しい雛人形のイメージが決まったら、その後はネット通販でお得に探してみても良いと思います。 ネット限定商品やセール・アウトレットといったお得なお雛様も結構あります。
実店舗ではなかなか出会えないような、ちょっと変わったお雛様もあるので、文末に広告をいくつか貼っておきますね。
雛人形を飾る
雛人形の飾り方・お雛様の置き方(配置)についてです。
お雛さまはいつ飾る?
お雛様を飾る時期については、特に取り決めがわる訳ではありませんが、2月3日の節分で鬼を払った後、立春(毎年2月4日頃)に飾るのが良いと言われています。
ワタシの友人は「せっかくならなるべく長く飾りたい」と言って、お正月の松が取れたら飾っていました。
ご都合の良い日を見計らい、直射日光の当たらない、湿気の少ない場所に飾ってください。
また、立春から数えて15日目あたりの「雨水(うすい)」までには飾りたいものだとも言われています。 二十四節気に数えられる「雨水」当日に お雛様を飾ると、女の子は良縁に恵まれるという言い伝えもあるそうなので、ぜひ意識してみてください。
お内裏さま
まず、お内裏様(お殿様)とお雛様(お姫様)ですが、現代では皇室の天皇陛下と皇后さまの並び方にならって、男性が向かって左・女性が右となるように 飾るのが一般的だそうです。
日本では左側の方が位が高いという考え方があったため、昔はお殿様が向かって右であったということですが、大正天皇が公式の場で皇后陛下の右側にお立ちになってから、 欧米文化を取り入れて「右上位」へと変わったらしいです。 今では、結婚式の立ち位置も「男性が向かって左」というのが一般的になっていますね。
ちなみに、お殿様を向かって左に置くのは関東式です。 京都式では、昔のしきたりを受け継いで現代でも「左上位」で飾られています。
※伊豆稲取「文化公園雛の館」のお雛様。2013.3月撮影
※関東式・左上位で飾るのは「お内裏さま」に限ります。 随身(左大臣・右大臣)などは、昔ながらの左上位のままです。
屏風を立て、雪洞をお二人の両側に置き、真ん中には桃の花を飾った瓶子を乗せた三方を置きます。
お殿様の右手には勺、左腰には太刀を入れ(本当は後上がりに挿す)、お姫様は開いた檜扇を持ちます。
三人官女
お内裏様の下の段に「三人官女」を飾ります。 真ん中に三方を持った官女が座り、向かって右に本酌である長柄の銚子(上位)、左に加えの銚子をの官女がきます。
官女たちの間には、高坏を置いて、可能であればお菓子などをお供えします。
三人官女には、真ん中の女性が立っているタイプもあります(3人とも立っている場合もある)。 持っている三方は三宝と書くこともあり、盃を置く台です。
※※伊豆稲取「文化公園雛の館」のお雛様。2013.3月撮影
実は、三人官女の真ん中の女性は「既婚者」で、眉を剃っておはぐろをしている女性なのだとか。 ワタシの雛飾りの官女には3人とも眉毛が描いてありましたけど(笑)、なるほど、 よくよく見ると真ん中の女性の口元だけちょっと違うように見えます。
昔は3人だけでなく、5人や7人の官女がいた雛飾りもあったそうです。
五人囃子
五人囃子(ごにんばやし)は、能楽の演奏者です。 元服前の少年たちなので、おかっぱ頭に侍烏帽子(さむらいえぼし)をかぶっています。 帽子を かぶっていないタイプもあります。
私はいつも適当に並べていましたが、多分↓こちらの並べ方が正しいです。 向かって左から、大きな音のする楽器がくるように飾ると忘れないとのこと。
太鼓(たいこ)、大皮鼓(おおかわつづみ)、小鼓(こつづみ)、横笛、謡い手の順になります。 ちょっとわかりにくいですが、大鼓(おおかわ)と小鼓(こづつみ)は立ち姿になっているんですよ。
能楽の五人囃子のことが多いですが、雅楽の5人楽師である場合もあるのだとか。 その場合は、左から、横笛(よこぶえ)・縦笛(たてぶえ)・火焔太鼓(かえんだいこ)・笙(しょう)・羯鼓(かっこ) となり、そこに琵琶と琴を加えた7人楽師という雛飾りもあるというから豪華ですね!
随身(ずいしん)
随身(ずいしん)は、右大臣と左大臣とも呼ばれていますが、お殿様とお姫様の護衛役です。 随臣(ずいじん)とも言います。 お内裏様から見て左側(上位)が左大臣で年長者、右側が右大臣で、若者となっているのだそうです。
木目込みのお雛様では、年配者と若者の区別がつきませんが、その場合は「より濃い色の衣服」を着ている方が左大臣になるとのこと。 確かにお口がへの字なので、そう言われてみれば 年配者に見えてきます。
段飾りのお雛様を拝見してみたら、左大臣には長いお髭が生えていました!
二人とも、左手には弓をもたせて袖にはさみ、右手には矢を羽根を下にして持たせるそうです。 背負い矢は、左肩から先が見えるように。
実は随身とは警護担当者で、実質的な左大臣は、公卿筆頭の一ノ上(いちのかみ)という高位者であったと言います。 そこまで 身分の高い人が随身というお役目を兼ねることは無く、大臣と呼ばれてはいますが、これは雛飾り上の「通称」のようなものだそうです。 なんだか「へぇ~」って感じですね。
随身のお二人の間には、菱台やお膳、お道具を置くことが多いようです。
仕丁(しちょう)
衛士(えじ)とも言います。 沓台(くつだい)をもっている仕丁がまん中で、向かって左が台笠、右が立傘を持っています。
台笠(だいがさ)というのは「日傘」のことで、立傘(たてがさ)が雨傘です。 関東式は大名行列をイメージしたもので、京都では御所の清掃係となっていて、 箒(ほうき)・熊手(くまで)・ちりとりを持っているのだそうですよ。
段飾りの場合は、お人形としては1番下段となり、仕丁の両脇に、桜と橘を飾ります。 向かって右が左近の桜で、左が右近の橘です。
左近・右近は、左近衛府・右近衛府の略称で、平安宮内裏の「紫宸殿の前庭に植えられている桜とタチバナ」を表しています。
私、例年、仕丁を↓下の写真のように配置していましたが、多分これは誤りですね。
どうも、棚板が狭くて置きにくいなーと思ってはいたのですが、 お庭の桜橘の間に置くのが正解なんだろうなーと思いました。 外出時の従者で庶民に近い身分ということですしね。
仕丁には、泣き上戸・笑い上戸・怒り上戸がいるそうでして、向かって右から「笑」「怒」「泣」となるそうです。 お顔から喜怒哀楽が判断できるか?と言うと、 わかりづらいお人形が多いようですが、段飾りのお雛様を見つけたら、ちょっと注意して見てみてください。
◆段飾り雛の並べ方は、こちらのページがわかりやすいです。
雛人形を仕舞う
桃の節句(お雛祭り)が終わったら、お雛様は仕舞ってください。
「お雛様をいつまでも飾っていると、嫁に行き遅れる。婚期を逃がす。」などと言われていますが、これは「娘のだらしなさを戒めるしつけ」の意味があるそうで、 実際に嫁にいけなくなる訳ではありません。
地域によっては、旧暦に合わせて「4月3日」までは飾るということもあるそうですし、からっとした晴天続きの日を見計らって、『なるべく早めに片付ける』とすれば良いと思います。
ワタシ自身は、今更婚期を逃すこともないので、端午の節句も梅雨の時期もとうに終わってもまだそのままで、夏の間中飾っていたことがありますが、さすがに お雛様が気の毒な感じでした。
お節句は、季節を意識して楽しむという年中行事でもあるので、「春のうちにお片付け」をしてあげてください。
つるし雛
細かなしぼのある絹織物を「縮緬(ちりめん)」と言い、その残り布を活用して作られた裁縫お細工物を「ちりめん細工」と呼びます。
江戸時代後期に、御殿女中や武家・商家といった裕福な女性達によって、袋物や小箱が作られたことがルーツだそうです。
明治時代には、女学生達の教材として取り入れられて、香入れや琴爪入れといった袋物や、玩具や人形をモチーフとしたお守りなど、いろいろなお細工物が 作られるようになります。 押絵・きりばめ細工・つまみ細工も、ちりめん細工の一種です。
「つるし飾り」は、ちりめん細工や手毬を糸に結び付けて下げたものです。
下げ方にもいろいろあって、支柱を立てて輪に吊るしたもの、天井から輪や十字で下げたもの、三連に吊るしたものなどがあります。
つるし飾りのモチーフは、四季の花々・動物・縁起物・干支などいろいろあります。 ひな祭りのつるし飾りには、子どもが使う玩具や着物、食べ物といったお細工物も下げて、 女の子の健やかな成長と幸せを祈願しました。
「つるし雛」は、伊豆稲取のつるし飾りです。 子や孫のために手作りされたつるし飾りを、お雛様の周りに下げたもので、稲取独自の伝統の飾り物とされています。
◆雛のつるし飾り
伊豆稲取温泉に江戸時代から伝わる風習で、桃の節句に一針一針縫い合わせて作ったぬいぐるみを、竹ひごの輪から赤い糸に下げて、ひな壇の両側につるします。
初節句を迎える娘の無病息災・良縁を願い、お祈りする飾りです。 普段の生活の中で、神仏にお祈りする時に手を合わせるのと違って、願う事柄が具体的な形となって飾られるところに
特徴があり、他では見られない稲取固有の雛飾りです。
日本3大つるし飾り
※本ページ掲載のつるし飾りや雛人形は(注釈のない写真)は、町田市芹が谷ふれあい会館で毎年開催されている「つり雛まつり」で撮影させていただいたものです。(木目込み雛は自己所有品)