【ジュニア用紋付(羽織・着物)】小学校卒業式や十三参りで、男の子が着る羽織・着物の肩上げやり方。
小学校の卒業式や十三参り(じゅうさんまいり)で男の子がジュニア用紋付袴を着る場合、レンタルの羽織や長着(着物)は、肩上げされていないことも多いようです。
実際に12歳(卒業式後の十三参り)の男の子用に、「黒紋付羽織・着物」の肩上げをしてみましたので、手順や注意点等をご紹介します。
■肩揚げをした「黒紋付の羽織と長着」です。
肩上げ「上げ幅(サイズ)」の決め方
着物(羽織)の肩裄の長さと、着裄(お子さんの裄丈)の差が「肩上げ」寸法になります。
■着裄(お子さんの裄丈)の測り方
※測る時は、背中側で測ります。
※手首の骨が隠れるくらいの長さを測ってください。
七五三や十三参りの女の子、浴衣やウールの着物といった普段着用でも、基本的に「肩上げのやり方」は同じです。
※肩上げは、肩揚げ(かたあげ)とも書きますが、ここでは肩上げを書かせていただきますね。
12歳男の子・肩上げの実例
元のサイズ 羽織/着物/半襦袢 | 71/70/65.5 |
---|---|
着裄(肩上げ後) 羽織/着物/半襦袢 | 62/61/60 |
- ◆肩上げ寸法は、一番上に着る羽織に合わせて決めました。 71-62=9cm です。
- ◆羽織の袖口から中の着物の袖が出ないように、長着(着物)は1cmくらい短く仕立ててあるので、着物の裄丈もそうなるように肩上げをしてください。
- ◆今回は「半襦袢(長襦袢の略式)」を使っていますが、長襦袢の場合も同様にしてください。
ジュニア用紋付袴。羽織袴のレンタルとサイズ選び方。
小学校卒業式や十三参りで、男の子が着る羽織袴。サイズ選びとレンタルする場合の注意点等。
肩上げのやり方
上のサイズ表を元に、実際に縫い上げてみましたので、ご参考まで。
最初に「上げ(あげやま)」の位置を決める。
通常、上げ山は肩幅の真ん中にくるようにつまみますが、今回の紋付羽織は、そうすると前の紋が肩山に隠れてしまって見えなくなってしまいますので。
あえて袖付側に上げ山を寄せて、紋が見えるようにすることにしました。
◆羽織の肩上げ:前
◆羽織の肩上げ:後
長着は紋が隠れてしまっても、上に羽織がくるので構いません。 肩幅の真ん中が上げ山になるように決めてください。
◆長着の肩上げ:前
◆長着の肩上げ:後
糸印で丁寧に縫う方法
一番上に着る「羽織」の肩上げは目立ちますので、キレイに仕上げることができるように、マチ針ではなく「糸印」をつけて縫いました。
多少手間がかかりますが、マチ針で指を突いて痛い思いをしたり・着物を汚したりするのは嫌という方は、こちらがおすすめです。
以下は「長着を肩上げしているところ」の写真ですが、羽織の場合も同様の手順で行ってください。
1:上げ山の位置に印をつける。
- ・マチ針を打ってから、しつけ糸で印をつけます。
- ・前身頃と後身頃がずれないように、2枚一緒に縫ってください。
- ・2枚一緒に縫うため、前で1cmはずらしません。(あとで印をつけ直します。)
2:つまむ分の印をつける。
- ・今回は9㎝肩上げで短くするため、4.5cmをつまむように、しつけ糸で印をつけます。
3:糸印を切って、前身頃と後身頃を離す。
- ・糸印を切る際、胴裏(裏地)を切らないように気を付けてください。
- ・前身頃と後身頃を開きすぎると、糸印が抜けてしまうので気を付けてください。
3:前身頃で、袖付側に1cm印をずらす。
- ・肩山から3分の2の位置(今回は11cm)で、1㎝袖付側に印をずらして、しつけ糸で印をつなげます。
- ・この印は前身頃だけに付けます。
4:上げ山から2つに折って、糸印を合せながらマチバリを二目落としの間隔で打つ。
- ・上げ山(水色糸)をつまんで持ち、両脇の黄色い糸印同士を合せます。
- ・まず最初に「肩山」を2枚合わせて、マチ針を打ってください。
- ・2枚の布がずれたりしないようにしっかり広げて、とりあえずマチ針で押さえます。
- ・その後、二目落としの間隔(2.5cm)を測りながら、2枚の布をマチ針で留めます。
5:二目落としで肩上げを縫います。
- ・後身頃から前身頃に向かって、二目落としで縫います。(表にちょんちょんと小さい針目)
- ・肩山はチョンチョンチョンと三目になるようにしてください。
- ・糸はポリエステル地ならポリエステル。正絹なら絹糸を使います。
- ・布と糸は色は同色で。(写真は見やすいように白にしています。)
二目落としの縫い方がわからない場合は、初着身上げのページに運針についての動画を掲載していますので、ご覧ください。
【腰揚仕方3】二目落としの縫い方。一つ身(初着身上げ)方法
七五三の3歳用。初着(産着)の身上げ・腰揚げの動画です。動画後半で二目落としの縫い方を教わっています。
6:対になるように左右の肩上げを縫ったら完成です。
- ・一つ紋の場合など、前身頃に紋の無い場合は、羽織の肩山位置を肩幅の中心にしてOKです。
- ・上げ山位置が、羽織・長着・襦袢と全て同じ位置になると、着用時にかさばってしまうため、少しづつずらしてください。
- ※ここでは和裁用の「へら台(裁ち板」を使用してマチ針を打っていますが、平らなアイロン台などで代用してください。
- ※上げ山をつまんでマチ針を打つ際は、布地がよれたりたわんだりしないように、ピシッと台の上に広げて行ってください。
- ※羽織・長着・襦袢と、サイズに合わせてそれぞれ肩上げをしてください。
長着の肩上げ(マチ針での印付け)のやり方を動画で。
糸印は面倒くさいとおっしゃる方へ。 マチ針を打って肩上げをする方法です。
長着や襦袢の肩上げは、着てしまえば見えませんので、マチ針を使ったやり方でも良いと思います。
針で手を刺さないように気を付けて縫ってくださいねー!
半襦袢の肩上げ方法。
通常、長着の下に着るのは「長襦袢」ですが、今回は身頃が晒でできている「半襦袢」を使っています。
◆男性用半襦袢の例
- ・上の画像は、メンズ用の半襦袢です。
- ・長襦袢の簡略タイプなのでカジュアル用ですが、ジュニアでしたら構わないと思います。
- ・黒紋付の半衿は「白・グレー・鉄紺色」になるそうですが、無難に「白い半衿」をかけました。(付け方は別ページにて)
【半衿付け】男子半襦袢(長襦袢)の半衿付け
半衿のつけ方・縫い方を教わっています。
半襦袢の肩裄は65。5cmありましたので、上がり裄丈60cm目安で、上げ山から2.7cmづつつまみました。
上げ山の位置が、羽織や長着と重ならないように、半襦袢は衿側に位置をずらしました。
女性の着物と違って、男性の着物には「振り(袂の開き)」が無いので、ジュニアでしたらもっと簡易なTシャツバージョンでも良い気がします。 長襦袢が無い場合には、お安い半襦袢で代用してください。
■お安いTシャツバージョンの例
小学生男子羽織・長着の肩上げ・注意点
◇縫い跡(針アト)が残る生地。
七五三の衣装で良くあることなのですが、白生地の表面だけを染めているものは、肩上げの縫い糸を抜いた(解いた)際に、生地の織り糸の位置が微妙にズレてしまって、 染まっていない白糸の面が表に向いてしまうことがあります。 つまり、肩上げのアトが白い点々のように見えてしまう状態です。
日本製着物でしたらそうはならないと思いますが、海外製の着物の場合は、縫う際には気を付けてください。
最初に針をプツっと刺した際に、生地に白いものが見えるようなら、そういったリスクがある可能性が高いです。 特に、 レンタルでお借りした衣装の場合は困ったことになってしまうかもしれませんので、多少大きくても、縫わずにそのまま着る方が良いかと思います。
◇ほんの少しだけ上げる場合。
本ページでご紹介している黒紋付は、9cm(4.5cmつづ)つまんでいますので、上げ山が紋の外側にくるように縫っていますが、1~2㎝しかつままない場合には、紋の内側(衿側)で上げる方が 見映えがするかもしれません。 上げ山が紋にかかっても良いのであれば、肩幅の中央でを取っても構いません。
◇肩上げをするタイミング。
七五三のページでも書いていますが、子どもは成長が早いので、あまり早い時期に採寸をして縫ってしまうと、予想以上に腕が長くなっていて、 裄丈が足りなくなっているかもしれません。
ご自宅の着物を肩上げする場合には、ご着用の少し前に縫うことをおすすめします。