振袖について。成人式の振り袖・婚礼用の大振り袖と引き振袖、卒業式の小振り袖など

成人式に着る振袖や花嫁さんの大振り袖、卒業式の小振袖について。

中振袖の着物

一般的に「振袖」と呼ばれる着物は、中振り袖(ちゅうふりそで)や大振袖(本振り袖)です。   成人式やご結納・披露宴のお呼ばれ等に着る「ミスの第一礼装=振袖の着物」になります。

中振袖・大振り袖(本振り袖)の他、小振り袖(二尺袖)といった、ミス向けの袖の長い着物がありますが、袖の長さや仕立て(着物の作り)方によって、使うシーンが違ってきます。

振袖の着物について調べてみたので、ご紹介させていただきますね。


 

大振り袖(本振り袖・引き振り袖)

花嫁衣装としての本振り袖(引き振袖)

花嫁さんの着物というと、まずは白無垢や色打掛といった「打掛」姿が浮かびますね。

■色打掛の例
色打掛

「打掛」は、着物に掛下帯(かけしたおび)を文庫に結んで、その上から羽織掛けますので帯結びは見えません。  「本振り袖」の場合は、帯を見せて着付けるところが、打掛と大きく違うところと思います。

本振り袖を「引き振り袖(引き袖)」にして着るというのも素敵ですね。 引き振り袖とは、上の写真のように着物の裾を「お引きずり」にして着ることを言います。

本振り袖は、引き振袖にしても・しなくても構わないそうなので、婚礼のスタイルや会場によって着付け方を選ぶと良いようです。

また、本振り袖は「花嫁さん限定の着物なのか?」というと、そういうことでもありません。  引き振り袖にしない、婚礼用ではない本振袖もあるからです。 その場合は、中振袖用の帯締めや帯揚げを合せて、 成人式にも使えるようです。

 

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婚礼衣装以外で「本振り袖」を着る場合。 成人式・披露宴ゲストの振袖について

結婚披露宴のゲストとして本振袖の着物を着る場合には、花嫁さんの正式衣裳とされる黒振り袖はやめましょう。 花嫁さんと肩を並べることになるので、五つ紋付黒振り袖はNGです。 

昔は「黒でなくても、本振り袖は避けて中振袖を着るのが無難」と言われていました。 最近は、お嬢様達の背の高さに合わせて、振袖のお袖も長くなって いますので、着物の袖の長さから見ての「中振・大振」は気にしなくて良いと思います。 誂えでない限り、着る人によって袖の長さの見た目が変わるからです。

振袖の柄の華やか度については、披露宴の会場にもよりますが、くれぐれも花嫁さんより目立たないように注意してください。


 

婚礼用の「本振り袖」の着物の裾には「ふき綿」と呼ばれる綿が入っているので、少しふっくらしています。
昔は「重ね着」をして着るのが正式だったという名残から、比翼仕立てになっているという点も、成人式の振袖とは違うところです。 

花嫁衣装に使われる本振り袖には色や柄も豪華で重厚な着物が多く、成人式用の振り袖に比べるとずっしりと重たいですから、着にくい着物と感じるかもしれません。

ただ最近では、日本髪にはせずにカジュアルな洋髪を選ばれる花嫁さんも多いので、婚礼用本振り袖のデザインも重厚的な古典柄のものとはちょっと違ってきていて、 少し軽めな趣のものがあるようです。 ふき綿のないものもあります。

本振袖の着物をレンタル店で借りる場合には、 お店の方に使用シーンをよく説明して、色柄や小物を選ぶようにしてください。 (成人式や謝恩会等)


 

本振り袖に合わせる帯

本振り袖に合わせる正式な帯は「丸帯」ですが、成人式で着る場合には、振り袖用の袋帯でも大丈夫です。
帯も帯結びも、振り袖に合うものを選んでください。 レンタルであれば、着物に合った帯をセットしていただけるはずです。

振り袖用の帯は、訪問着や付下げ着物に締める「二重太鼓結び用の袋帯」よりも、大柄デザインのものが多く、豪華に変わり結びを結びます。 

お着付けやヘアメイクも、本振り袖の知識のある方・慣れた方にお願いするのが良いと思います。

丸帯

丸帯

花嫁さんや舞妓さんに使われている帯。裏表に通し柄がある豪華な帯です。七五三7歳用もあります。

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【本振り袖】黒振り袖と白・色付きの色振り袖

本来の本振り袖は黒地の五つ紋付で、明治時代には「黒振り袖」が正式な花嫁衣裳とされていました。

明治以前は「お色直しの衣裳」であったそうですが、打掛を省略して黒留袖を正式としたので、本格的な花嫁衣装として一世を風靡したのだとか。

黒振り袖の他には白や色振り袖があり、「本振袖=ミスの第一礼装」とされています。
でも、現代では「本振り袖」と「中振袖」の区別が曖昧になってきていますので、最近は成人式等で着る振り袖(大振袖・中振袖)までを「ミスの第一礼装」とすることが多いだろうと思います。

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本振り袖の引返し

本振り袖は、裾廻しが「引き返し」という仕立てにするのが正式だそうです。

引き返しとは、表地と裾廻し(八掛)が同じ生地で、模様がある場合には表地と関係のある模様が描かれているとのこと。
「引き返しと訪問着の共八掛、何が違うのかな?」と調べてみて、引き返しは「コートや羽織の仕立てで使われる」と書かれているのを見て、なるほどと思いました。

反物の身頃の生地にそのまま八掛部分が繋がっているので、仕立てる際に裾で切り離すことをせずに、 そのまま裏に「引き返して仕立てる」から引返しって言うんですね。 八掛の分も生地が必要なので、贅沢な着物です。

つまりは、共八掛=引き返し八掛であるようです。 引き返し八掛は、留袖・振り袖・訪問着・喪服の着物で使われますが、 婚礼衣装以外で使う本振り袖の場合は、引き返しにしないで普通の八掛を付けることもあるそうです。

引き振袖にするのであれば、引き返しでないと見てくれが悪いと思います。

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本振り袖の重ね着

最近の本振り袖は、重ね着を比翼仕立てにして省いているものが一般的です。

留袖や色留袖も同様ですが、昔は「下襲(したがさね) 」と言って、着物の下に薄い下着を重ねる「重ね着」をしました。

「下襲(したがさね) 」は、礼装の着物の下に着る下着のことで、これを本襲(ほんがさね)と呼ぶそうです。
 白羽二重や白綸子で、着物と同じカタチに作って、2枚重ねて長襦袢の上に着ます。

ですが、2枚着るのはお金もかかるし大変だし・・・・・・ということで、今はほとんどが「比翼仕立て」というナンチャッテ下襲になっている訳ですね。
 裾・袖・衿・振りに「比翼」という白生地がつけられて、まるで2枚重ねて着ているよう見えます。

◆参考:黒留袖の比翼イメージ
留袖の比翼

正式には白ですが、色振り袖の場合には「色もの」の比翼で仕立てることも多いそうです。 

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振り袖の袖の長さ

本振り袖・中振り袖・小振り袖といった「振袖」と呼ぶ着物の袖丈については、書籍やサイトによって書いてあることがちょっとまちまちであるのですが、 以下手持ちの書籍から抜き書きしました。 ご参考までに。

【振り袖の袖の長さについてを書籍より】

  • ■ハクビ京都きもの学院「きもの教本」より

    ・本振り袖-袖丈3尺(114センチ)
    ・中振り袖-袖丈二尺五寸(95センチ)

  • ■世界文化社「ひと目でわかるきもの用語の基本」より

    ・大振り袖-婚礼衣装用(125センチ)
    ・大振り袖-お色直し・成人式・謝恩会など(114センチ)
    ・中振り袖-(87~106センチ)
    ・小振り袖(76~86センチ)

  • ■東京着物着付文化協会・専攻科テキストより

    ・振袖-五つ紋付の黒地で袖丈114cm。
      手を下げて足のくるぶしくらいまでの袖丈の着物。

※小振袖は、80センチ前後とか85センチ~95センチ等と書かれているサイトさんもありました。 76センチほどの2尺袖も、小振袖と解釈されているようです。

きりまる吹き出し

七五三・7歳用の祝い着も振袖です。 お袖の長さは、ふくらはぎくらいあります。

 

最近のお嬢さんは身長が高いので、大振り袖と中振り袖の袖丈の長さの目安が曖昧になってきているそうです。 
背の高いお嬢さんは、大振り袖サイズの袖丈にしないと、バランス的に振袖に見えないということだと思います。

ですので、袖丈が何センチかというよりは、八掛が引き返し・比翼が付いている・ふき綿入り(入れない本振り袖もあるようですが)・色や柄といったことで判断し、 婚礼用の振り袖と区別する方がわかりやすいですね。

以前、写真館着付師の先輩が「レンタルの振袖の袖は、大体が120cmか108cmかな」と言っていましたが、今はもっとお袖の長い振袖が多いかもしれません。

お嬢様の身長によって、袖を引きずらないものを選んでください。

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中振り袖

中振り袖について
中振り袖

 

中振り袖は、成人式・卒業式・謝恩会・披露宴・お茶会(初釜)・各種パーティで使える「未婚女性の礼装用の着物」です。

前述したとおり、大振袖(婚礼のぞく)&中振袖=振袖と呼ぶことが多いですけど。

一般的には「未婚女性が着る着物」とされていますが、成人式前にご結婚された若いママや、ご結婚されたけれども“お母さん”にはなっていない若い女性等、 「せっかくだから」と振袖を着られる方はいらっしゃいます。

舞台やステージなどでは、年齢に関係なく、振袖を「衣裳」としてご利用になることもあるようです。

和装のマナーを重んじられる方には「結婚してるのになんで?」「いい歳なのに振袖?」と言われてしまうかもしれませんけど、ワタシは「ケースバイケースで着て良いのではないかな?」と思っています。

ただし、「礼装」として格を重んじる場面では、既婚・年配の女性は振袖を着ない方が無難です。   ドレス感覚の衣裳として「盛装」でのご利用であれば、素敵に着ていただける気がします。(色や柄にもよりますけれどね~)

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中振り袖の袖丈(サイズ)と裾廻し

本振り袖の章で前述しましたように、本振り袖(大振袖)よりも中振袖の方が袖丈は短くなります。

着る人の身長によって袖丈を決めて作りますが、最近の「振袖セミオーダー」では、洋服のS/M/Lサイズのような感じで 身長によって大体のサイズが決まっていて、その規定サイズの中から一番自分に合ったサイズで誂えるというシステムが多いようです。

裾廻しは、ぼかしや無地の別布の八掛を付けることが多く、セミオーダーの振袖の場合は、仮縫いされた状態で既に裾廻しも付いていることが多いと思います。

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中振り袖の柄(模様)と袖丈を詰める場合

◆中振り袖の絵羽模様
振袖の絵羽模様

振袖と言えば、豪華な絵羽模様(縫い目をまたいで柄付けされている)になっていて、1枚の絵のような模様となっているものが多いですね。

現在は、色無地・小紋・付下げ着物程度に柄付けされたものなど、いろいろなデザインの振袖が出ています。 テイスト的にも、昔ながらの吉祥模様のような古典的なものから、現代的な洒落たデザインのものまで多種多様ですね。

有職模様・吉祥模様といった古典柄は、格式高い柄になります。

モダンでも古典でも、どちらもミスの第一礼装には違いないので、成人式やパーティー・初詣などにはモダン柄で全く問題ありませんが、 お茶会や何かの式典など正装として参列するような場合には、古典柄の振袖の方が向いています。

振り袖を購入される場合には、成人式後の利用シーンも想定して選ばれると、その後も着る機会を増やすことができるので、オススメです。

後々「振袖の袖丈を詰めて、既婚後まで長く着たい」とお考えの場合は、振袖の柄も「袖を切っても柄が中途半端にならないもの」を選んでください。

以前、着付けを担当させていただいたお客様で、細かい小紋柄の反物を使って振袖を誂えていらしたお嬢様がいらっしゃいました。 通常の袖丈の反物であったため、振袖にするために2反買って、 長着(着物)の残りでコートをお作りになられたそうです。  成人式後は、卒業袴にも合わせていらして、とても素敵だと思いました。

無地や小紋は、絵羽模様の振袖に比べて見ると、一見は地味に見えるかもしれないですが、成人式の会場ではかえって目をひくかもしれませんよ♪

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中振り袖の伊達衿と半衿

現代では、中振り袖を重ね着にしたり、比翼をつけて着ることはほとんどしません。 大抵は「伊達衿」という比翼の変わりに見えるような衿を入れます。

中振り袖の伊達衿
中振り袖の伊達えり

中振り袖の伊達衿は、1枚だけでなく、少しずらして2枚3枚入れることもあります。

複数枚重ねることで胸元(衿元)が分厚くなってしまうので、1枚で2色出るように作られているタイプもあります。

色は、金・銀・赤といった定番色の他、ピンク・水色・緑色などの色ものや色伊達衿に金砂子やラメを入れたものもあります。 着物のカラーに合わせて選んでください。

リバーシブルタイプの伊達衿なら、着物や小物合わせによって色を変えて楽しむこともできます。 
伊達衿は、振袖だけでなく、訪問着や色無地・付下げにも使うことができますが、伊達衿を入れると華やかになり格がちょっと上がりますので、 入れない方が良い場合もあります。 あまり仰々しくしたくない場合や、スッキリ見せたい場合には入れません。

振袖の場合は、大抵伊達衿を入れて着ると思います。 伊達衿は、「重ね衿」と呼ぶこともあります。

中振り袖に合わせる半衿も、刺繍半衿・カラー半衿・レースやスワロフスキーの付いたものまで、いろいろあります。 上の写真は、色半衿に刺繍の入ったタイプです。 

もちろん、装飾のない白の塩瀬羽二重の半衿で、すっきりと着ていただいても構いません。

白・金銀糸の吉祥柄の刺繍半衿は、留袖や色留袖用とされていますが、今は振袖用の豪華な金銀タイプがありますので、お店の方にお尋ねになってみてください。

基本的には、古典の着物には古典的な半衿を、モダンな着物にはモダンな半衿を合わせます。 豪華さ(格)も着物と合わせてください。

使用して衿垢等で汚れてしまった半衿は、長襦袢から外してお手入れすることが可能ですが、豪華な刺繍半衿をお家で洗うと、 布地がつまって台無しになってしまうことがありますので、プロに任せた方が無難です。 呉服屋さんか、信頼できるクリーニング屋さんにお願いしてください。 

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中振り袖に締める帯

中振り袖 帯の例(袋帯)
中振り袖の半えり

中振り袖に締める帯は、丸帯か袋帯になります。

丸帯は重くて締めづらいものが多いですし、現代の中振り袖向けには作られていないので、大抵は「袋帯」を締めます。

袋帯にもいろいろあって、古典的で重厚なタイプから、モダンで今風なものまでデザインも豊富になりますし、 帯の長さ・硬さ(中の芯で厚さも変わります)といった「質感」もかなり変わってきます。

基本的に、昔の袋帯の方が、厚くて・硬くて・短いものが多いような気がしますが、その分刺繍も豪華で素敵なものも多いです。
着物に合わせて帯を選ぶわけですが、帯の質感と長さによっては、今風の変わり結び(羽のたくさんある結び方)はできませんので、注意が必要です。

着物によっては、シンプルな従来の結び方(福良雀や縦矢・文庫結びなど)の方が似合うということもあるので、 帯を選ばれる際には、帯結びもイメージしておくと良いと思います。

一般的に、袋帯は柄仕舞いのある「六通柄」が多いので、無地場が目立たないように結んでいただく必要があります。

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小振り袖・二尺袖(こふりそで・にしゃくそで)

小振り袖は、袖の長さが76センチから86センチくらいの着物です。

小振袖を成人式や披露宴で「礼装」として着ることはなく、ちょっとしたパーティやお出かけ、お茶会、卒業式のようなシーンで着る着物となります。

礼装用の着物でないので、既婚者でも着て良い振袖だそうですが、お出かけに年配者が小振袖を着るのは、ちょっと違和感を感じる気がします。  やはり「長い袖」は、若い人向けという印象が強いからです。

格を問わないパーティーでしたら、小振り袖でも構わないかと思いますけど、小振袖は可愛らしい柄や模様で作ることが多いので、 嫁入り前に誂えて箪笥の肥やしにしていまった場合を除けば、あまり手にする機会はなさそうです。

きりまる吹き出し

振袖は、若い女性が「袖(ふり)をひらひらさせて歩くことで、女っぷりをアピールする。」とために生まれたらしいです。 孔雀のオスが、 羽を広げてメスを誘うようなイメージなんですね。 だから、既婚女性の振りは長い必要がないのだそうです。

小振袖は「可愛らしい柄や模様で作ることが多い」と書きましたが、それは十三参りのお着物としてとても適しているからです。

絵羽模様の着尺でしたら、お袖も中振り袖に誂えるのが良いそうですが、友禅着尺(型染の小紋柄)であれば、小振り袖が似合います。

十三参りで小振り袖を着る場合には、肩上げをして、大人用の袋帯を変わり結びに締めてください。

十三参りの着物イメージ

十三参りの着物と帯

十三参り(じゅうさんまいり)に着る着物と帯。肩上げやコーディネート、小物について。

小振り袖は十三参りの他、卒業式の袴の着物として定着している感がありますね。  二尺袖と呼ばれる袖丈76cm程度の小振袖は、卒業式の袴に合わせる着物としてレンタル店やセット販売で人気があります。

卒業式袴のイメージ

卒業式の袴と着物

卒業式で着る袴の用意(借りる・買う)の注意点や、着物と袴の合わせ方など。

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卒業袴の小振り袖・二尺袖

卒業袴用の小振り袖 
小振袖

卒業袴用の二尺袖(小振り袖)は、小紋柄もあれば付下げ風の柄になっているものもあり、その年によって流行というものがあるようです。  もちろん古典的な友禅小紋も、袴にはとても合います。

 

レンタル用の卒業袴の二尺袖着物は、袴を着けることを前提にしていますので、はじめから身丈が短く作られていて、 おはしょりを取らずに着付けることができるようになっているものが多いです。

そのため、レンタルや袴とのセット販売で多く見られる「卒業袴用の小振袖」は、普通の長着(着物)としては使えません。  素材も化繊(ポリエステル)の着物が、圧倒的に多いです。

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