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訪問着とは?
訪問着は、未婚・既婚を問わずに着ることのできる格の高い着物です。
絵羽模様に柄付けをした着物で、古典からモダンなもの・趣味的なものまでいろいろなタイプがあります。
◆訪問着の着物の例
反物の状態で柄付けをした「付下げ」の着物と区別が難しいですが、 付下げよりも格式があり・豪華な着物であることが多く、共八掛(ともはっかけ)が使われているのが訪問着です。
付下げについてのページもご覧ください。
付け下げの着物
付下げ・付け下げ・附下、どれも「つけさげ」と読みます。着物の柄が上向きになる模様付けがされているものを「付下げ」と言いますが、 中でも衿や衽で模様がつながっているものを『付下げ訪問着』と呼ぶそうです。 仮絵羽で柄付けする訪問着に対して、反物のままで柄を入れたものが付下げです。
訪問着とは
「訪問着(ほうもんぎ)」は、「絵羽模様」に柄付けされた準礼装(略礼装)の着物です。
訪問着の絵羽模様
絵羽模様とは、一枚の絵のように縫い目をまたいで描かれている模様のことで、白生地を着物の状態に仮仕立てをしておいて、模様が繋がるように柄付けをして染め上げてあります。 未仕立てでも柄の配置がわかりやすいように、仮絵羽(仮縫い)の状態で置かれていることが多いです。 訪問着の他、留袖・振袖にも絵羽模様が使われています。
柄の入り方はいろいろで、総模様・肩裾模様・腰高模様などがありますが、上前の裾~脇縫い~背縫い~下前へとぐるっと繋がっていることが多く、 衿~胸、袖にも模様が入っていると豪華に見えます。
八掛(裾回し)は、揃いの共八卦が使用されるのも、訪問着の特徴です。
振袖も誂える時には「仮絵羽(仮縫いの状態)」から仕立てることが一般的ですが、訪問着は振袖ほど袖を長くは仕立てません。
とはいえ、袖丈が特に決っている訳でもないので、若い人や背の高い人は少し長めの袖丈に作るとはあります。 ミス・ミセス、どちらの方も着ることができる着物です。
訪問着の紋と格
訪問着は「第一礼装の黒留袖・色留め袖(ミセス)・振袖(ミス)の次に格のある着物」という位置づけで、紋を付ければ「準礼装」・紋なしで「略礼装」となる着物です。
準礼装と略礼装の違いはわかりにくですが、礼装を簡単にしたものが略礼装なので、フォーマル度の高い順に「礼装・準礼装・略礼装」となるイメージだと思っています。
訪問着が登場したのは明治以降で、大正時代に「公式な訪問の際の社交用の着物」として誕生した「訪問服」が、現代の訪問着のルーツであるとも言われています。
一般的に着られるようになったのは、昭和の初め。 その当時は三つ紋、もしくは一つ紋をつけるのが、当たり前であったようです。
■1つ紋の例(丸に染め抜き日向紋・縫いの陰紋)
最近は豪華な模様付けの訪問着には、あまり紋入を見かけません。 むしろ少しあっさりした柄ゆきの「付下げ訪問着」に1つ紋を入れることの方が多いと思います。
背に1つ紋が入るだけで、卒入学式や結婚披露宴など、より一層「正式な場所」へ出席するに相応しい改まった感じの着物になります。
紋については別途書きますが、1番格式高いのは「染め抜き日向紋」です。 ただ、白く抜いた紋を入れると格式張ってしまい、逆に使用範囲が狭くなってしまうため、 最近では、あえて縫い紋を入れるということも多いです。
金糸などで入れた縫いの陰紋は目立たないので、軽めの席にも着やすい「紋入り訪問着」となるからです。 しかしながら、 「紋を目立たせたくないなら、入れなくたっていいじゃない? 入れるなら白く抜くべき」と着物に詳しい方に言われたこともありますので、誂える際にどっちにするか?は、悩ましいところですね。
■縫い一つ紋入りの付下げ訪問着
※付下げ訪問着=付下げの着物で衿や衽で模様がつながっているもの
※付下げ着物=柄が上向き。衿と肩、裾の衽と前身頃の模様が繋がっていないもの。
訪問着は、紋が無くても色無地の三つ紋付と同格です。(諸説あります。)
本来は【一つ紋訪問着=色無地の三つ紋付で準礼装。 無紋訪問着は盛装】という扱いのようですが、最近は華やかな訪問着に紋を入れることが少なくなっているため、 無紋でも華やかで格式の高い柄の訪問着は、準礼装にも匹敵すると考えられるようになっているということだと思います。
結婚式・披露宴に着る「訪問着(付下げ)と色無地紋付」として、もう少し詳しく触れていますので、こちらもご覧いただけると幸いです。
結婚式・披露宴に着る「訪問着(付下げ)と色無地紋付」
友人や職場の同僚として着る訪問着。控えめに装いたい時の色無地紋付。 訪問着と色無地の紋と格について。
基本的にはセミフォーマルの着物になりますが、紬などの趣味性の高い訪問着は、礼装としては使えません(後述します)。
訪問着のTPO。格と帯合わせ
一言で訪問着と言っても、金糸銀糸・箔使いなどのゴージャスなものもあれば、スッキリと落ち着いた印象のものもありますし、 古典的なもの・モダンで現代的なものなど、素材もデザインもいろいろです。 着て行く場所(シーン)や着る人の立場・年齢・個性によって、合ったものを選ぶ必要があります。
準礼装として着る訪問着なのか? パーティーやちょっとしたよそ行き着として着る趣味性の高い訪問着なのか?によって、締める帯も変わってきます。
準礼装(セミフォーマル)としての訪問着の帯
披露宴ゲスト・訪問着の帯
結婚披露宴に招かれたゲストさんの訪問着の写真です。
セミフォーマルとしての訪問着には、錦織(佐賀錦・綴錦・唐錦)といった織り帯や、琥珀織り、金銀箔使いの袋帯を合せます。 本綴れの帯なら、名古屋帯でも良いそうです。
古典柄の着物には、古典柄の帯を合わせるとしっくりきます。 格の高い文様としては、松竹梅・鶴亀・吉祥模様(桐鳳凰)・有職模様・正倉院模様(宝物文)などがあります。
袋帯は二重太鼓にするのが一般的ですが、若い方なら「お太鼓系の控えめな変わり結び」にしても大丈夫です。
お祝いの席には「末広」を帯にはさむと良いです。
七五三・卒入学式等ママの訪問着の帯
七五三宮参りやお子さんの卒・入学式のママの着物は、少し控えめな雰囲気の「付下げ訪問着」がお勧めです。 あくまでお子さんが主役なので、付き添いのママが目立ってしまってはいけません。 帯も着物に合わせた袋帯を選んでください。
七五三ママ・付下げ訪問着の帯
5歳のお子さんの七五三。ママの着物です。
入学式ママ・付下げ訪問着の帯の例
ワタシの場合、小・中・高の卒入学式は、下の2つの付下げ訪問着と1つ紋の無地着物を、帯を変えて着まわしました。
■卒・入学式によく着た着物(付下げ訪問着と1つ紋の無地着物)
お茶会・卒入学式など、控えめで格のある帯が合うシーンには、付下げの着物に名物裂写しの帯や焼箔の帯もおすすめだそうです。
■訪問着に合いそうな袋帯いろいろ
特に↓こちらの袋帯は、どんな着物にも合うので便利でした。 金ぴかすぎず・いろいろな色が程よく入っていて・四季を限定しない柄の帯は、使い勝手が良いです~
※レンタル呉服店の処分市で買った「訪問着用の袋帯」です。
着物と帯のコーディネートは、格や色調を合せることはもちろんですが、古典なら古典・モダンならモダンと雰囲気を合せると、素敵に見えると思います。
■お友達の素敵な訪問着コーデ
紬など趣味性の高い訪問着
訪問着に使用される素材(生地)には、縮緬(一越・二越)・紋綸子・緞子・紋意匠縮緬(地紋を織り出した縮緬)、梨地(細かいシボ生地)などがあります。
その他、後染めの結城紬や絵羽模様に織り上げた紬、更紗・ろうけつ染め・絞りなどの訪問着がありますが、こうしたものは、 カジュアルなパーティ・観劇・お正月といった「ちょっとしたお出かけ」に向いているお洒落用の着物になります。
「趣味性の高い訪問着」の帯は、綴れ織りや色箔の袋帯(または名古屋帯)、洒落袋帯を合せます。
■紬の汕頭刺繍・訪問着
上の紬はほっこりとした真綿系の質感ですが、ツベっとした大島紬の訪問着もあります。 紬地ですので、訪問着であってもフォーマルシーンでは着れません。
■お茶屋さんのお供に「紬の訪問着」
七緒・vol.25の「恥をかかないTPO入門」:きちんとしたい日。この1枚を選ぶワケという特集に、「お茶屋さんのお供に紬の訪問着⇒お座席でやわらかものを着て、
芸妓さん舞妓さんと競ってしまうことを避け、場をわきまえる意味も込めて格を控えめに『紬の訪問着』を選ぶ。 訪問着なので、同席される方に失礼にあたらない」と書かれているのを見て、なるほどなぁと思いました。
ワタシには、お座敷に同席する機会など無さそうですが、格を控えめに・きちんと装いたい日には良さそうですね。 紬の訪問着にどんな帯を乗せたらいいのか?
ワタシは上手くコーディネートできずにいるのですが、七緒では「すくい織りの袋帯」が紹介されていました。
付け下げの着物
付下げは、柄が上を向くように仮仕立てをして模様付けをした着物です。 衿や袖で絵羽になっていない「付下げ模様」の着物と、衿や衽で模様がつながっている「付下げ訪問着」の着物について。
結婚披露宴の訪問着
結婚披露宴に着る着物。 訪問着を着る場合の帯・小物合わせやレンタル着物について。