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コーリンベルト・着物ベルトの使い方(動画あり)。着物の着付けに使う和装小物「コーリンベルト」について。
着物の着付「準備リスト」に書かれていることが多い「コーリンベルト」ってどんなもの?
コーリンって何?いる・いらない?使い方は?…など、コーリンベルトのお話です。
■目次(目的の場所に飛びます)
コーリンベルト(着物ベルト・着付けベルト)ってどんなもの?
コーリンベルトは、着物の着付けで使う和装小物の一つです。
長襦袢や着物の衿や折り上げたおはしょりを押さえて(固定)着崩れしにくくしたり、着付けが楽にできるように、補助する役目をしてくれます。
着物の衿を整える際に使うことが多いですが、長襦袢の衿合わせにも使えます。 着物と長襦袢、両方に使っても構いません。
◆長襦袢に使うイメージ。
◆コーリンベルトを着物に使うイメージ。
「コーリンベルト」は、必ず使わないといけないものではありませんが、あると便利。ワタシは使う派~♪
コーリンベルトの使い方
前置きが長くなりましたが、コーリンベルトの使い方についてです。
着付け方(コーリンベルトを使う手順や使い方)には、いろいろなやり方があると思いますが、ワタシが良く使う方法をご紹介します。
着付が終われば、見えるものではありませんので。 ご自身が使いやすい・結果的にキレイに仕上がる使い方をしてください。
コーリンベルトのゴムの長さ
■ゴムの長さ=わきの下あたりの位置で、胸幅くらいが目安です。
※コーリンベルトゴムの長さは、ゴムの伸縮性や着物を着る方の体型によっても変わります。後から調節してください。
コーリンベルトのクリップの左右(使う向き)
■一重側を先に下前の衿にとめます。
※下前に一重側のクリップを留めます。上前に二重になったゴムがくるようにしておくと、後から長さを変えられます。
コーリンベルトのクリップの開閉
■クリップ部分の開閉は、「付け根部分をカチっと前に押し倒すと開く・もとに戻すと閉まる」というように行います。
※プラスチックタイプも金具タイプも、基本的には同じ動作で開閉します。
長襦袢にコーリンベルトを使う
長襦袢にコーリンベルトを使う場合、衿合わせを整えるために使います。
長襦袢を自分で着る編
【コーリンベルトの使い方】と銘打っておいてなんですが。 まず最初に、「コーリンベルトは使わずに、腰紐を衣紋抜きに通して長襦袢を着る方法」をご覧ください。
【長襦袢の着付・自分で編】衣紋抜き+腰紐でコーリンベルトを使わない方法
次に、腰紐をコーリンベルトに変えて着てみますよ!
◆【長襦袢の着付・自分で編】衣紋抜き+コーリンベルトで着る場合
※動画ではコーリンベルト+胸紐をかけていますが、コーリンベルト+伊達締めでも良いです。 その場合は、マジックベルトの伊達締めはしなくても構いません。
できれば両方やってみて、やりやすい方を選ばれると良いと思います。
◆番外編【長襦袢の着付・自分で編】美容衿+コーリンベルトで着る場合
※ワタシ、装道さんの美容衿愛用者です。 付け紐がある分、少し手順が違うかなーと思ったので、一応動画も作ってみました。 ご参考までに。
長襦袢を着せてあげる編:コーリンベルト使用
1:衿を決めたら、アンダーバストのあたりの位置でコーリンベルトのクリップを留めます。
※あまり下過ぎても上過ぎても良くないです。 着物を着る際の「胸紐の少し下くらい」が良いと思います。
2:身八つ口からコーリンベルトを出して、背中を回して右脇まで持ってきたら上前の衿を留めます。
後ろを見るとこんな感じです。
※背縫いがまっすぐになるように&背中のシワを取ります。 長襦袢の丈が良ければ、このまま伊達締めをしめて衿を固定してください。
※長襦袢が長い時は、腰ひもを1本かけて丈を上げてから伊達締めをします。 コーリンベルトのゴムがキツイ(緩すぎる)場合には、伊達締めを締める前に調節してください。(自分で着る場合は、最初にちゃんと調節してね)
着物にコーリンベルトを使う
着物にコーリンベルトを使う際には、衿合わせを固定すると同時に、おはしょりを上げて押さえるために使います。 伊達衿を入れる時には、重ね衿の巾を固定できるので便利です。
着物を自分で着る編
コーリンベルトを使って、自分で着物を着る方法です。
◆【コーリンベルト使い方】着物ベルトでおはしょりを上げる方法・その1
※動画では薄物(絽の着物)を使っていますが、単衣や袷の着物でも要領は同じです。
袷の着物、特に滑りやすい素材だったり、着丈が長くておはしょりがたくさん出ちゃうような時には、コーリンベルトを使った方が着やすいと思います。
◆【コーリンベルト使い方】着物ベルトでおはしょりを上げる方法・その2
※おはしょりが長い・斜めになる場合に、おはしょりを整える方法です。 お太鼓結びする時用です。
※振袖・浴衣など、後ろのおはしょりもキレイにする場合は、たるみを脇に送ります。この方法は使いません。
着物を着せてあげる編
先に、上の動画を観ていただくと、下の手順がわかりやすいかも?です。 一人で着付けする場合には、やっぱりコーリンベルトがあると着付けしやすい♪
1:腰ひもを締めたら、衿を決めつつ下前のおはしょりを折り上げてクリップを留める。
■おはしょりをたたむ前を別のアングルで。
※畳んだおはしょりが胸の上に乗ってしまうと、帯を締めた後に「帯の上から上げたおはしょりのアトが出てしまう」ことがあります。 畳んだおはしょりは、胸のふくらみの下・脇方向へ収めてください。
2:身八つ口から背中へ回して、右脇から上前の衿にクリップを留める。
※背縫いをまっすぐにして、背中のシワを取ってください。
おはしょりを持ち上げる必要がない場合には、この後身八つ口を整えて伊達締めをしまめすが、上前のおはしょりを上げる場合には胸紐をかけます。 衿が 動かないようにするためです。 胸紐をかけると、身八つ口も整えやすくなります。
背中は、胸紐とコーリンベルトの間から、おはしょりの余分を引き出しておくと、後で衣紋を抜くときに便利です。
※おはしょりの余分は、胸紐とコーリンベルトの間から出して下に倒す。
コーリンベルトはゴムなので伸び縮みしますから、おはしょりを上げる処理が楽にできます。
長襦袢の時と同様に、身八つ口を揃えて脇でタックを取ったら伊達締めをかけます。 伊達締めをかけたら胸紐は外しても構いませんが、 外すことで衿が乱れるようなら、締めたままにしてください。
コーリンベルト(着物ベルト)は必要なのか? 使う時と使わない時。
コーリンベルトが考案されたのは、昭和20年代後半ということなので、割と新しい着付け小物と言って良いですね。
ワタシが着付け教室に通い始めた30年前(1987年頃)には、すでに結構普及していましたけど。 コーリンベルトが登場する前は、腰紐を使って衿やおはしょりを押さえていたそうです。
つまりコーリンベルトは、必ずしも必要な和装小物ではありません。 流派によっては「コーリンベルト」を使わずに、腰ひもで着付けることもあるようですし、 ご年配の着付師さんは「コーリンベルトを使うより、紐を使った方が着付けがしやすい。」とおっしゃる方も多いです。
逆に、最初からコーリンベルトを使っての着付けに慣れてしまうと、無いととても不便に感じてしまうものでもあります。(ワタシはこっち)
前述しているとおり、着物によっても「コーリンベルトのいる・いらない」は変わってきます。
浴衣のように薄くてすべらない生地の着物であれば、コーリンベルトを無理に使う必要はありません。
着丈が長くておはしょりの始末がしにくいとか、伊達衿を2~3枚入れる等して衿にボリュームがあるとか。 衿やおはしょりをキレイに作れない場合には、コーリンベルトを使ってください。
■コーリンベルトを使った方が良いと思うケース
- ・自分で着る場合。(コーリンベルトを使い慣れている人、または初心者)
- ・おはしょりが長い。(始末しにくい)
- ・着物がすべる。衿がもさつく。
- ・伊達衿が多い(2枚入れるなど)・伊達衿が厚い。
- ・腰ひもが足りない・使いにくい紐が含まれる場合。
※コーリンベルトが必要か否か?は、ケースバイケースです。 着付師さんや着物によります。
コーリンベルトを使わない場合。
着付師が前・後の二人組で着付ける場合には、コーリンベルトを使わないことはよくあります。
その場合は、後ろの着付師が身八つ口から手を入れて、コーリンベルトのクリップで押さえる位置を指で挟んで持ちますので、そのまま胸紐をかけて伊達締めへ・・・と進みます。 (身八つ口から入れた手は、紐をかけるタイミングで抜きます。)
着物の衿・おはしょりを仮押さえしたい場合には、以下のように「下前を腰ひもで押さえる」というやり方もあります。
コーリンベルトの代わりに腰ひもを使う場合の一例。(着物編)
腰ひもを締めて、下前のおはしょりを折り上げ、衿を決めたら、まず腰ひもの中心を当てて、衿とおはしょりを押さえます。 腰ひもは身八つ口から出して、背中で交差して前に回します。
上前の衿を整えて、前で紐を仮結びします。
背中のシワを取り、背縫いの位置を確かめ、身八つ口を整えてから、前で胸紐を締め直してください。
必要があれば、上前・背中側のおはしょりを上げ、伊達締めで固定します。
コーリンベルトの種類
コーリンベルトには、いろいろなタイプがあります。
コーリンベルト社製のものでも、長襦袢用の「結び」ですとか、メッシュベルト仕様の夏向けですとか、後ろで交差させて 前で留める「和装じめ」ですとか。
どれも同じ目的で使うものなので、一人1~2個あれば十分と思いますが、こだわって使い分けてみるのもアリかもですね。
長襦袢の胸紐を兼ねた「コーリン結び」
■夏に最適なメッシュタイプ
■コーリン結びと似ています。こちらは留め具タイプです。
コーリンベルト社製以外のものでは、クリップ部分が金具になっているものが多い気がします。
■クリップが金具のタイプ(着物ベルト・着付けベルト)
伊達締めと一緒になったタイプもあります。
■コーリンベルトを兼ねているタイプ(クリップ付)の伊達締め。
コーリンベルトの名前の由来
「コーリンベルトのコーリンってなんだろう?」と調べてみて、開発者さんのお名前が由来していることがわかりました。
開発者とは、コーリン株式会社の創業者である「高林三郎」さんです。
たぶん「たかばやし」さんとお読みするのだろうと思いますが、「高林」と書いてコーリンなんですね。 「高林三郎」さんは、全国きもの指導者協会の創始者でもいらっしゃるとのことで、 着物がより楽に着れるように・・・と、開発された商品だそうです。
幅2センチほどの平ゴムの両端に、衿を挟むクリップがついているものを総じて「コーリンベルト」と呼ぶことが多いですが、 実際は「コーリン株式会社さんの着物ベルト」がコーリンベルトであり、商標登録されています。
■コーリンベルトの商標
※コーリンベルト社製であっても、商標の入っていないコーリンベルト(エコノミータイプ)もあります。
なので、細かいことを言えば「コーリン株式会社」さん以外の類似商品は、着物ベルト・着付けベルトなどと呼ぶべきなのだと思いますが、そうなると 「ウエストベルト(腰ひもがわりのゴムベルト)と区別が曖昧になってわかりにくいからでしょうか。 商標があっても無くても、コーリンベルトと呼んでしまうことが多いようです。
本ページでは、コーリンベルト社製以外の類似ベルトも、総じて「コーリンベルト」と書かせていただいております。
袂クリップとしてコーリンベルトを使う。
あまり一般的な使い方ではありませんが、着物を着てしまってから、コーリンベルトを「袂クリップ」として使うというのもアリです。
左右の袂をフリの方からクリップで留めて、ゴムは背中へ渡しておきます。 帯をお太鼓に締めている場合には、お太鼓の中を通しても良いです。
■袂クリップのイメージ
袂クリップを付けたままで外を歩いたりはしませんが、家事をしたり食事をしたりする場合に、袖を汚さない・邪魔にならないようにするために使います。
コーリンベルトを首にかけて、ミニタオルをクリップに留めると「簡易エプロン」にもなります。
コーリンベルトが壊れたら。代用品はある?
コーリンベルトは消耗品です。 長く・何度も使っていると、クリップの開閉部分が壊れて開かなくなるといった不具合が起こることが多いです。
両端のクリップが2つ同時に壊れることはほとんど無いので、どちらか一方が壊れたコーリンベルトは、捨てずに保管しておきましょう。 それとは別のコーリンベルトが壊れた場合に、 使える方のクリップをすげ変えればよいからです。(片側壊れた2本のコーリンベルトで、使える1つのベルトを作る。)
コーリン株式会社さんは、j-senクリップという世界特許のある和装用以外のクリップも製造販売されていますので、例えばサスペンダー・名刺ホルダー・ エプロンクリップ等に使われている、類似のクリップを代用品ですげ変えるのもありとは思いますけど。 やはり着物用コーリンベルトのクリップと比べてしまうと、 使い勝手が悪いでしょうね。
ワタシは以前、サスペンダーの金具を壊れたコーリンクリップと付け替えて使ったことがありますが。 「これなら 紐でやった方が良いじゃん」と思ったくらいに挟みにくくて、サスペンダーのクリップでは、全然役に立ちませんでした。
形状や素材によっては、着物を傷つけてしまう恐れもあるので、むやみに代用のクリップを使うことは、おすすめしません。
100均でコーリンベルトは買える?
ワタシは、コーリンベルトが100均で売られているのを見たことがありません。
コーリン社製の商標入りタイプ(DX)であっても1つ1000円しませんし、商標の無いエコノミータイプであれば、 400円前後で買えるようなので、初めから楽天市場やamazonで新品を買ってしまう方が楽ですね。 メルカリやヤフオクで探したとしても、単品ではあまりウマ味が無いような気がします。
どうしても安く手に入れたい場合は、骨董市やリサイクルショップで探すという手もありますが、中古は壊れやすいかも?という心配がありますし、 そもそも探す手間がかかります。 『たまたま良いものを見つけたら、とりあえず買っておく』というのは、おすすめですけど。
着物ベルトとして、浴衣やふりそでセットに入っていることが多いので、余っているものがないか?お友達に聞いてみるのも良いかもしれないですね。
ちなみにワタシは、クリップの開閉部分が大きく開くものの方が、挟みやすく・使いやすいので好きです。 本家のコーリンベルトは、やはり使い勝手が良いと思います。
■クリップがパカッと開いて使いやすい本家コーリンベルト
耐久性・コスパで言えば金属製タイプかと思いますが、コーリンベルトは「着付けを楽に・キレイに仕上げる」ために使う和装小物でありますので、そのあたりは悩ましいところですね。
長く何度も使うのであれば、使いやすい本家のものを・・・と思いますケド。 振袖や浴衣に1~2回しか使わないのであれば、市販品の着物ベルトならなんでも良いと思います。
冒頭に書いた通り、コーリンベルトは絶対に使わないといけないものではないので、無理に揃える必要はありません。
でも、担当の着付師さんがコーリンベルトでの着付けに慣れていて、「コーリンベルトがあった方が、キレイに着付けていただけるということであれば、1つくらい購入しても良いと思う」というのが本音デス。